「ベルカ、吠えないのか?」
古川 日出男の「ベルカ、吠えないのか?」を読了。当時、いろいろなところで絶賛されていたので、期待はマックスに膨らんでいたのだが、期待が大きすぎたのか、僕の五感を十全に満たすほどではなかった。これなら「13」の方がよかった。
とはいえ「ベルカ、吠えないのか?」が楽しめなかったわけではない。
20世紀の歴史と軍用犬の歴史が複雑にリンクしていく様子はスリリングで引き込まれていく。第二次世界大戦、ベトナム戦争、アフガン戦争・・・、犬の系譜は続き、戦争の現場で交差する軍用犬の運命はときに勇猛でときに儚い。狼と交わって、その能力を飛躍的に高めるところは高揚感も著しかったのだけど、犬は交配し、枝分かれし数が増えるとともに、個々の犬の歴史ははしょられるようになる。当然のことなのだけど人間に比べ世代交代ははやく、産む数も多いのでどんどん増える。そしてどんどん死んでいくので、帳尻は合うのかもしれないけど、途中から物語のスピードがはやくなって、そこが物足りない。もっとボリュームがあってもよかったんじゃないか?
無駄にボリュームが増えてもしようがないけれど、他にも世界中で戦争は起きていたわけだし、犬の系譜に連なるエピソードは可能だったのではないかなぁ。古川日出男の才能ならそれは可能だろ。
- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/22
- メディア: 単行本
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