読書の原体験

mori05022009-04-16

島田雅彦の『溺れる市民』と吉村昭の『熊撃ち』を読了。

島田雅彦は本を読む楽しさを教えてくれた作家のひとり。高校生の頃(だったと思う)に読んだ『僕は模造人間』が僕の読書原体験。
『僕は模造人間』の斜に構えたペルソナのアクマくんの皮肉たっぷりの言質と、当時聞き始めたロックがどっぷりリンクして、ヒットチャートやベストセラー以外にオルタナティブな価値観があって、そこに豊穣な音楽や文学がたくさんあることを知った。
(中学時代には『幻魔大戦』と『グイン・サーガ』を、小学校のときは『青葉学園物語』を読んでました)

この頃の島田雅彦はかってのような鋭さはなくなってしまった(いつまでも青二才を標榜できるものでもない・・・)ように感じられるが、『溺れる市民』はあいまわらずの島田節でけっこう楽しめた。

吉村昭の本を読むのは初めて。人を襲う熊と、その熊を追う熊撃ちの短編を集めたもの。あとがきで実話を元にしているとあって驚いた。本書が書かれた時期を考えると、たかだか100年前くらいのことなのだが、当時の北海道ではヒグマが人間を襲い食べてしまう事件がけっこうあったことに驚く。ヒグマは森に入ってきた人間を襲い、ピクル(バキに出て来る)のように人間を貪り喰っている。今と違って自然は怖ろしいものだったのだ。まだ人間とヒグマは対等であったとも云える。

2年前だったか、エサを求めて麓に下りてくるツキノワグマを人間への被害の有無に関わらず何千頭も殺してしまった現在との当時の距離に呆然としてしまう。